Pumpui's Diary

タイに約18年住んだ男のつぶやき

インド横断とカラコルムハイウェイ~ペシャワール(2)

「ほら、あそこだ」

雑踏を走り抜けると、ドライバーが前方を指す。ホテルの名前がネオンで表示されている。予想に反し立派なホテルだ。銃を持った警備員がドアの前に立っている。

「泊まりたいのだが?」というとボデイチェックをされ、終わるとそのままフロントへ案内された。バスを降りてから出会ってきたパシュトゥーン人と違い、民族衣装ではない服装の若い男性だった。

「部屋はある?」

「あるけど、なんにちいるんだ?」

「2泊」

「このホテルは明日クローズする。1泊でいいならどうぞ」

明日クローズ?どういうこと?若い男に聞くも、要領を得ない。明日カイバル峠へ行って、少しこの辺りを見て1泊してからラホールへ向かうつもりだった。頭の中でこの後のスケジュールを考えようとしたが、混乱するだけだ。このあと宿を探すのも面倒なので、まずは一泊してから考えることにした。

教えてくれた方の情報通り1泊3500パキスタンルピー(約3150円)だった。4000ルピーを払うと、500ルピーはチェックアウトのときに返すという。

きれいな部屋だった。バンコクでも2000バーツ(約7000円)はすると思われる。エアコンはもちろんあり、トイレとバスルームに仕切りがあった。ソファもある。

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Emarat Hotel @Peshawar

朝のチャイ以来、食事らしい食事をしていないのでレストランを探す。ホテルを出ると、むさくるしい男しか歩いていない。雰囲気に飲まれていた。引き返してホテルに併設されたレストランでチキンプラオというフライドライスのようなものを食べる。ちょっと薄味だが、やはり自分にはチャパティよりコメのほうが合う。トイレもきちんとしたところなので、ラッシーも合わせて注文。ラッシーは好きな飲み物だが、移動が続くときは控えている。

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キンプラオ 

水を買いにホテルの外を歩く。アルコールが御法度なためか、フルーツジュースの店が目についた。パシュトゥーンの男性があの服装で、店先の椅子に座ってフルーツジュースを飲んでいる姿はちょっとシュールだった。もちろん写真を撮る勇気はない。そんな店のひとつで水を買い、部屋に戻る。電力事情もよさそうなので、今のうちにしっかりと充電しておく。

朝目覚める。さて、どうしようか……。ペシャワールへ来た目的はカイバル峠へ行くこと。日帰りで十分行けるところにあることは知っている。そのままラホールへ行くと着くのは深夜になる。今は知らないが、かつてラホールは泥棒宿しかないことで有名で、旅行者はみな避けていた街だった。カイバル峠へ行くなら、ペシャワールにもう一泊したい。夜からずっと考えていたが、結論は出せなかった。

8時過ぎにドアが叩かれる。開けるとフロントに電話してくれとメッセンジャーがいう。

「9時に全館クローズするからそれまでにチェックアウトしてくれ」

荷物をまとめ、チェックアウトの手続き。昨夜の若い男性とは違う年輩の男が座っていた。電話で話したのはこの男らしい。デポジットの500ルピーを返してもらおうとすると200ルピーしか返ってこない。

「あと300ルピーは?」

「お前、食事代、払っていないだろう?」

「全額払っているぞ!はよ返せ!」

男はすぐに200パキスタンルピーをよこしてきた。油断も好きもあったものじゃない。

「9時にはクローズするからな。早く出て行ってくれ」

「わかってる。なぜクローズするんだ?」

年輩の男は面倒くさそうに

「ローカルアクティビティだ!」と答えた。

最後までホテルがクローズする理由はわからなかった。

「今日はローカルアクティビティで街がストップする。早く出て行った方がいいぞ」

最後に年配の男はこういって私を追い出した。

悩んでいた……。カイバル峠へ行くなら、ホテルの前にたむろしている車と交渉すればいい、と昨夜フロントにいた男性に言われていた。3か月前に行った方はホテルに車をアレンジしてもらったと話していた。

「Daewooのバスターミナルへ連れて行ってくれ」

なぜかこう口に出てしまった。いったいなにをしたかったのか、自分でもわからない。昨夜降りた場所に着き、ラホール行きのバスの出発時間を聞く。11時だという。到着するのは17時ころか。これではインドに入ることは無理だ。ラホールに泊まるか?ペシャワールに留まるか?チケット売り場にいた男性は、ペシャワールで会った人の中では、一番品のある雰囲気を醸しだしていた。なんとなく頼りになりそうな……。果たして今日ペシャワールに(外国人が)泊まることができるのか?と男性に尋ねてみた。

「今朝、ホテル追い出されて、泊るところないかもしれないんだけど、ペシャワールでなにかあるの?」

「お前は泊まるところがないのか?」(なにがあるかについては触れない)

「外国人が泊まれるところ、ほかに知らないんだよ」

すると男性は紙にあるホテルの名前を書いてくれた。

「このホテルはここに近いし、外国人も泊まれるはずだ」

どこまで信じていいかわからないが、まあなんとかなりそうな感じ。

「で、お前はどこに行きたいんだ?」

「いや、泊るところがあるのなら、カイバル峠に行きたいのだけど」

「ああ、そこらにいるタクシーと交渉すれば問題ない」

「危なくないのか?護衛が必要とか聞いたけど?」

「ん?みんな普通に行ってるぞ?」(なにをこいついってるんだ?という表情) 

といってバスターミナルにたまっている男たちと交渉してくれた。

カイバル峠へ行くことが決まった。