Pumpui's Diary

タイに約18年住んだ男のつぶやき

【Book Review】『盤上の向日葵』(柚月裕子)

藤井聡太4段の活躍もあり、将棋ブームが沸き起こっている。そんなブームに乗って書いた一冊かと甘く見て読み始めたところ、その思いはすぐに一蹴された。

将棋の街天童市で行われているタイトル戦会場に刑事が訪れるところから物語は始まる。

白骨化された死体と一緒に埋められていた600万円もの価値がある将棋の駒を追い続ける警察。母親を亡くし、父親に虐待される将棋好きの少年。二つの物語が交互に描かれる。奨励会を退会した刑事もさることながら、やはりこの物語の主役は少年の壮絶な人生だ。小池重明をほうふつさせる真剣師の強烈な個性が、さらに物語を引き立ててくれる。金には汚いが、並々ならぬ将棋に対する執念。この狂気に巻き込まれた少年の先に待つ人生は栄光か、破滅か?!

人生のどうしようもないやるせなさに思わず涙が出そうになった1冊。直木賞候補にもなった「孤狼の血」に劣らない作品だ。

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