Pumpui's Diary

タイに約18年住んだ男のつぶやき

労働争議が起きた会社の末路

タイに進出しても業績不振で撤退、あるいは日本法人が倒産してしまうケースは決して少なくない。

信田は現地採用として精密機械メーカーC社で働いていた。C社は大手製造メーカーN社からの発注に頼ってタイに進出した。営業活動はN社との結びつきの強い顧問と称する70近い男性が主体になって行っていたが、新規開拓は苦手だったようだ。N社との取引も足元を見られているのか、利益が出ない体質だった。この顧問の待遇は、会社の業績を鑑みるとかなり高いものだった。だが経費を削減するためにこの顧問を辞めさせると、N社からの取引も打ちきられかねない。工場をタイよりも人件費の安いラオスに移転をするなど、経費削減に努めているところだった。信田は新規開拓要員として採用され、少しづつ取引先を増やしていっていた。

12月のある土曜日の午後、信田から電話があった。この日の夜、信田と会う予定になっていた。

「悪い、今日のアポ中止にしてくれ」

数日前今年のボーナスが払われないと会社が従業員に通達したところ、ちょっとした労働争議になり、それをメディアに報じられてしまった。それを知った信田が開拓したいくつもの取引先から電話が入り、ずっと取引先に事情を説明しに行っている、今もバンコク郊外にある取引先へ向かっている途中だという。

「さっき知ったんだけど、ここ数年ボーナスを払っていなかったらしい」

日本で与信管理に携わっていた立場から、その会社がかなり危なくなっている雰囲気を感じた。

「年が明けたら転職活動を始めるよ」信田はそう言って電話を切った。

信田は新規開拓の実績を買われ、すぐに転職先が決まった。

数年後、C社の日本法人が倒産したというニュースが入ってきた。

(この話は事実をもとに書いていますが、登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません)