Pumpui's Diary

タイに約18年住んだ男のつぶやき

利益が出ないのはタイ人が悪いのか?

タイ法人は儲かっていない、だから給料を上げることが難しい。駐在員がよくこう言っているが、果たしてそれは本当にタイ人に問題があったのだろうか。

J社は日本にあるサービス業。タイだけではなく、世界に10数か所の拠点を持っていた。その取引先のひとつにT社があった。J社にとってT社は最重要取引先といえる位置づけであった。

・同様のサービスを提供する他社と比べて、J社への見積もりは半額から三分の二程度の額だった。

・見積もりが上記のような額であるにもかかわらず、見積もりには出しにくい特別なサービスを求めているため、他社と比べてマンパワーを多く必要としていた。

・J社は顧客に労働者を派遣する業務を行っていた。J社には100人の直接雇用の作業員がいる。この100人を1日単位でその日に発注のあった複数の顧客へ派遣していた。足りない分は、アウトソースに発注することになっていた。だが、T社の要求は「すべてJ社直接雇用の作業員でなければならない」というものだった。

・T社にて作業を行う作業員は、年に一度T社主催の講習会に出席しなければない。この講習会の終了証を持った作業員のみがT社に入ることが許可されることになっていた。この講習会は平日に1日かけて行われる。そのため、講習会開催日、従業員はほかの顧客の仕事ができない(この日の受注はすべてアウトソースに回すため利益はほとんどない)。

・T社は年に一度、設備等の監査ということで、J社を訪問することになっていた。T社の監査チームがJ社が使用している機械設備を確認し、監査にパスした機械設備だけがT社に入ることが許可されることになっていた。この監査も半日以上かけて行われていた。(この日の受注もアウトソースに回すため利益はほとんどない)

・T社の講習会および監査は(受注の少ない)土日に行われることはなかった。

つまり受注が増えれば増えるほど、赤字が増えるような取引先であった。このような厳しい条件だが、T社のタイ人はそれが当然のような態度で、現場としては決して好ましい顧客という感じがしなかった。

あるとき、J社駐在員がタイ人スタッフに業務改善案の提出を指示した。最も多い意見がT社との取引条件見直しであった。これを知った駐在員はこういった。

「T社とはJ社のタイ法人だけでなく、世界中のJ社が取引している。だいたい似た条件なので、もしタイ法人だけ条件を変更しようとすると、その情報が世界中に流されるでしょう。もしそれが原因で取引を打ち切られたりすると、タイ法人社長の首が飛んでもおかしくない、T社はそれくらいの顧客なんです」

T社とJ社は資本関係もなく、人的交流も行われていない。しかし、このような取引先が売り上げ(利益でなく)の十数パーセントを占めている状態では、タイ法人としての利益は薄く、タイ人は納得できまい。駐在員はタイ法人の収益にはあまり関心なく、給料に反映されることもないが、タイ人はボーナスに影響するからやはりシビアにとらえていた。

「納得いかないんだったら、タイ人で取引先を開拓したらどうだ」

駐在員はタイ人にこう言った。

今も条件の見直しはされていない。

(この話は事実をもとに書いていますが、登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません)